2007年4月29日日曜日

Review: JabRef

最近はめっきり、図書館に論文をコピーしに行くことはなくなりました。いや、論文、読まなくなったわけじゃないですよ。むしろ昔より読んでます。でも、図書館に出かけて「紙のコピー」をとることって、なくなりましたね。だって、最近は、ほとんどの論文がインターネット経由で PDF でダウンロードできますから。

ある論文を読んでいて、そこで引用している別の論文が気になったら、すぐにネットでダウンロード。論文読む数も増えますし、手持ちの PDF の数も増えていきます。一本の論文から複数の参考文献を引いて、さらにその参考文献から孫引きしていくわけですから、文字通りネズミ算的に増えるわけです。

で、その結果どうなるのかというと…

一、 デスクトップが PDF でいっぱいになる。
二、 しょうがないので一つのフォルダにまとめる。
三、 でも、結局数が多すぎてほしい時にほしい論文が手に入らない。
四、 しょうがないので、またジャーナルのサイトから同じ論文をダウンロードする。
五、 すると今度は、単に無意味に PDF の数が増える
六、 PDF の数が増えたのでさらに論文は見つからなくなる。

まさに六道輪廻。無間道です。そんな僕をニルヴァーナ(涅槃)に導いてくれたのが JabRef でした。

JabRef は GPL というライセンスの下で配布されている Java ベースの文献管理フリーソフトです。論文のタイトル、著者、ジャーナル、ページなどをデータベースとして保存・管理してくれます。また、データベースそのものはは LaTeX という(多くの技術屋が愛して止まない)組版システムで用いられる bibTeX 形式になっています。ですから、あなたが LaTeX で論文を書いているのであれば、各文献につけたタグを自分の原稿に書き込むだけでそのまま参考文献として引用できます。

この JabRef、この手のフリーソフトの常として「開発者=ヘビーユーザー」です。ですから、ユーザーのかゆい所に手が届くようにどんどん改良されていくわけです。どの辺に手が届いているのかというと…

まず、単純な検索式を組み合わせることで、大量の論文の中から素早くほしい論文がみつけられます。さらに、文献と PDF を関連付けることが出来ます。つまり、検索でほしい文献をみつけて、その脇の PDF アイコンをクリックするだけでその文献の PDF ファイルが閲覧できるわけです。(ちなみに、この機能、PDF だけでなく、Word や PowerPoint など、どんなファイル形式に対しても使えるようです。)また、文献とURLを関連付けることもできますから、Optics Express みたいにマルチメディアファイルのついてくるジャーナルは、マルチメディアファイルをURLを登録しておけばすぐにそのファイルのダウンロードページを開くこともできます。

また、論文情報の登録自体がめんどくさい!という人は CiteSeerPubMed などのデータベースから文献情報をインポートすることもできます。(Web of science からインポートできないのは玉に傷ですが…)

そして、なによりも使いやすいのが文献のグルーピングです。各文献を「グループ」に登録することができるのす。たとえば「××論文の参考文献」というグループを作ってそこに××という論文で引用されていた参考文献をすべて登録しておくことができます。で、実際に××を読んでいるときにサクサク引いて内容を確認できるわけです。また、グループは、「フォルダ分け」とは違ってひとつの文献をいくつものグループに登録することができます。ですから、「この文献はどっちのグループに入るの?」と悩む必要はありません。両方に登録すればいいのです。さらに、このグループ化は動的に行うこともできます。例えば「タイトルに OCT とついてる論文」という動的グループを作っておくと、自分でわざわざグループに登録しなくても「タイトルに OCT とついてる論文」は自動的にそのグループに登録されるのです。

僕自身最近では、この JabRef、すでに文献管理を超えた使い方をしています。例えば、自分や同僚が投稿中の論文も登録しています。これをしとけば、外の人間と議論をしているときに、すぐに「未発表」の資料をとりだすことができます。未発表の資料は当然ながらネットで落としてくるわけにいきませんから、これが非常に便利なのです。

また、僕自身が現在レビュアーとして在査読している論文も登録しています。この時、文献情報に peerreview というキーワードを追加しておきます。そして、そのキーワードをもった論文は自動的に「査読中」という動的グループに登録されるにようにしています。

さらに最近では、プロジェクトの資料もこれで集積しています。関連文献はもとより、内部資料(PDF だけでなく、Word や PowerPointなど)、関連したデバイスのカタログ、そのメーカーのURLなんかも「文献」として登録します。で、それを「~プロジェクト」というようなグループに登録してしまうわけです。必要であれば、関連メールなんかもファイルとして保存して、JabRef に登録してしまいます。そのプロジェクトに関する資料は参考文献からスタッフとのやりとりメールにいたるまで、すべて JabRef から閲覧、検索できるわけです。

たぶん、同様のことができるソフトは他にもいろいろあるんだと思います。でも、JabRef はオープンソースでフリーです。さらに、他の大規模なソフトに比べて、コンパクトで単純なソフトです。

僕は、単純なものを色んなふうに工夫して使うのが、面白いなあ、と、思います。

Joschi

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