2013年4月3日水曜日

ありがとうございました

只今をもって、日本のアカデミアのありかたに対する問題提起としての48時間絶食を修了いたします。通常の仕事を続けながらの絶食は想像していたよりつらかったですが、Facebook などを通した皆様の温かいご声援のおかげでなんとかやり遂げることができました。
 この48時間、いろいろな事を考えることができました。ここで考えたことは、徐々に文章にまとめていこうと思います。
 まずは、ひとまず、皆様ありがとうございました。そして、いただきます。
2013年4月3日 午後3時 安野嘉晃

2013年4月1日月曜日

日本のアカデミアと人と人の話


 みなさんは、大学において実質的に期限付きでアカデミックな仕事をしている職員のことをご存知でしょうか。ポスドク(博士研究員)やテニュア・トラック教員がこれにあたります。私は、現状の日本のアカデミアにおけるこのようなポジションの教員・研究員の扱いには目に余るものがあると感じています。

 2000年代半ば、日本の大学は、日本のアカデミアの活性化を目指してテニュア・トラック制度というものを導入しました。これは、従来終身雇用であった大学教員に雇用期間を設け、ある期間後にその教員に終身雇用権(これをテニュアといいます)を与えるかどうかを審査する、というものでした。これは、実質的なアカデミアへの競争原理の導入です。私は、個人的に競争が好きです。尊敬できる相手と、信頼できる審判のもとで競争をすることは、自分も相手も高めてくれます。
 しかし、それは、あくまでもフェアなルールのもとでの話です。ルールのない無法地帯での競争は不毛な足の引っ張り合いでしかありません。しかし、大学における競争は、競争を主催する強者が、実質なんのルールもなく立場の弱いものを互いに競争させる、およそフェアプレーとはかけ離れたものになってしまいました。アカデミアにおける競争を無法地帯にせず、実りあるものにするための鍵は、雇用者である大学、そしてそれを運営するシニア教員が「競争とはなんなのか」を明確に意識し、「他人を競争されるとはどういうことなのか」ということを深く考え、そのことに責任を持つことであったのだと思います。
 あくまでも私個人の意見かもしれませんが、日本におけるアカデミックな競争がうまく働くことはありませんでした。実際に、ここ最近報道されることの多くなった日本のアカデミアからの学術成果の低迷がその結果を物語っています。
 表面に現れるデメリットは、この研究成果の低迷です。しかし、それと同時に、現場で不安定な立場でアンフェアな競争をしいられる教員や研究員は著しく疲弊しています。
 最初に書いたように、私は競争が好きです。尊敬できる相手と競争することは楽しくて仕方ありません。しかし、無意味に競争「させられる」ことは好きではありません。私は世の中の役に立つ仕事をするために競争をしています。決して、ニヤニヤ笑う観客を満足させるための研究者同士の殺しあいショーに出演しているつもりはありません。私が参加する競争の目的は、世の中を少しでも良くする技術を作ることです。
 もしあなたが、日本の大学において「競争をさせる」立場にあるのであれば、まず一度立ち止まって「なんのために競争をさせているのか」「競争をさせられれている人間がどのように感じているのか」「競争をさせられている人間が、あなたの事をどう思っているのか」を考えてみて下さい。我々はあなた方の奴隷ではありません。あなた方と人と人としての関係を望んでいます。
 もしあなたが日本の大学において競争することを強いられていていて、そして、それが「アンフェアなルールのもとに行われている」「競争する意味が見出が明確でない」、そもそも「自分たちを競争させている人たちが信頼出来ない」と思っているのであれば、ぜひ、声を上げてください。 私は、今の日本のアカデミアの無意味な残酷さと、無意識な無関心さに強く抗議するものです。私は、私の抗議の意志を、本日(201341日)午後3時より48時間の絶食を持って表明いたします。
 あなたがどのような立場でもかまいません。ただ、あなたがいま見ているものが、おかしいと思うのであれば、声を上げてください。私と同じように絶食を持って抗議の意志を示していただいてもかまいません。48時間が無理なら24時間でも12時間でも、一食抜くだけでもかまいません。なにもしなくてもかまいません。例えば、Twitter Facebook などで声を上げてください。あなたがもし大学で不安定な雇用を強いられている教員や研究員で、それがおかしいと思うのならば、あなたを競争させている人が信頼できないと感じてることがあるのならば、声を上げてください。あなたの氏名を名乗る必要はありません。もちろん、名乗っていただいてもかまいませんし、名前はなのらずに大学名だけでもかいまいません。まったくの匿名でもかいません。 #daigakuhunger というタグをつけてつぶやいて下さい。
 私は、人は善意で生きていると信じています。しかし、人の耳は、声を挙げない人の声を聞けるようにはできていませんし、人の善意は聞こえないものに涙できるとは限りません。 201341安野嘉晃