2007年4月27日金曜日

隙間から生まれるもの

「逢魔刻(おうまがとき)」というのがありますね。昼と夜の隙間の時間。昼にお夜にも属さないような空白の時間です。そういう空白には、なにか不思議なものが産まれたりもするようです。

技術屋という仕事をしていると「すごいやつ」に出会うことが多々あります。「なんでそんなこと思いつくんだよ!」というようなことをばんばん思いつく人。ああいう人って、どうやってあんな面白いことを考え出すんっでしょうか。先日、イギリスのロフブロウ大学で開かれたホログラフィーと光トモグラフィーの研究会に参加してきました。招待者29人だけの小さな研究会です。そこに、その「すごいやつ」がごろごろしてたのです。

研究会はその29人が順番に自分の研究を発表する形で進められます。ただ、普通の学会とは違って、発表の途中でみんなが意見をつけるんですね。発表している本人が、寝ても覚めてもそのことだけ考えて研究に対して、今日初めてその話を聞いた他人が口をはさむわけです。「質問する」だけではなくてさらに質問をきっかけにして「意見を交換する」のです。その意見交換の中で、その技術に対して新しいことがわかってきたりもします。やってる本人も気づいてなかったような「面白いこと」や「新しいアイディア」が見つかるわけです。

まるっと三日、そんなことをしているうちに「あれ?」と思ったのです。この「面白いこと」、いったい誰が「考え出した」んでしょうか。研究を説明してる本人?それに質問した人?その質問に対して意見を付けた人?僕は質問もしたし、意見もつけたし、その中で「新しいアイディア」にも思い当りました。でも、その新しいアイディアは自分で思いついたわけではないのです。それに関しては自信があります。僕は、そんな面白いアイディア思いつくようなすごいやつではないですから。きっぱりと言い切れます。

ここからは僕の想像なんですが、ほんとに面白いアイディアというのは、人と人のぴったりくっついた隙間から、ひょろりと出てくるんだと思います。だって、一人の個人が一人だけの知恵で思いついたことなんて、所詮その一人を超えることはできないと、やっぱり思うわけです。だからたぶん、研究者には「アイディア豊富な研究者」も「アイディアが乏しい研究者」もいないのです。「アイディアが生まれる隙間」が豊富にある環境と、「アイディアが生まれる隙間がない」ような一人ぼっちの環境があるだけなのです。たぶん。

こういう風に書いてしまうと、人間の創造性を否定しているようで、なんだかつまらないような気がするかも知れません。でも僕は、研究会で出会った人たちとの隙間から、ひょろりと顔をだしてきた、この、「人と人の隙間という『虚(うつろ)』からアイディアという『存在』が生まれる」というこのアイディアに、興奮したりもするわけです。

Joschi

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